2010/09/14

『キングダム・オブ・ヘブン』の見どころはオーリーじゃないぞ!!!

マルクス・アウレリウス・アントニヌスというローマ皇帝の名前を、
受験勉強のときに暗記させられた覚えはないでしょうか。
ローマ皇帝のなかで最も有名な賢帝です。


で、キングダム・オブ・ヘブンにでてくるエルサレムの王、ボードゥアン4世は、
日本人にとって別にあまり聴いたことのない名前かとおもいますが、
この伝説のローマ皇帝になぞられるくらい、有名な王です。


感動的な逸話がいくつも残っている王さまで、戦略家とか切れ者政治家とかではなく、
人の気持ちを動かすのに非常に優れた王として知られた王です。


聖地エルサレムを争う戦争の時代、彼のおかげでつかの間の平和が保たれていました。


というか・・・たった一人で戦わなくてはならなかった王さまなんですね。


王は若くしてらい病を患い、進行していく病気に悶え、視力までも失い、それでも最前線で戦い、
自分はすぐ死んじゃうから後継ぎのことも一生懸命考えたのに


身内が馬鹿ばっかでどうにもならず・・・・
こころざしなかばで24歳で亡くなったのです。


私自身、イスラム教にもキリスト教にもたいした思い入れはございませんので、
エルサレムの歴史に興味がわかず、途中で見るのをやめるだろうと覚悟の上で鑑賞しました。




しかし、この映画、心に刻まれる逸品となったのです。


その要因は


 また「実は誰かの息子」「選ばれし若者でした」「歴史物の恋愛要素」
って役かよw っていう、

白馬に乗ったオーランド・ブルーム(主役w)
ではなく、



エキゾチックな衣装だとこんなに美しいのか
と驚かされたエヴァ・グリーン(普段はマリリン・マンソンみたい)


でもなく、



 じゃあ監督が得意な、この美しい中世の光景と、
演技派で魅力的な 有名キャストでがっつり固めた
騎士団の熱い戦いっぷり


でもない。




 エドワード・ノートンが演じた、若き王、ボードゥアン4世でした。


といってもこの映画では脇役で、 映画のオフィシャルサイト(日本)
に騎士たち一人一人のページと解説はあっても
彼のキャラクターのページすら、ないですw


この王さまは、らい病で醜く溶けた肌を隠すために 甲冑を身につけています。


らい病っていえば、あの『もののけ姫』でたたら場に包帯ぐるぐる巻きの人がいましたが、あれです。

私は、彼が白い馬にまたがり、ゆっくりと広場に歩いてくるシーンを非常によく覚えています。

従者を従え、歩む王。 神々しいんですね・・・彼の姿は。
十字軍のうすいブルーの衣服に、シルバーの甲冑、そして真っ白なマント・・



映画史上でも指折りの美しいシーンではないでしょうか。




王の理念を本当に理解しているのは、たった一部の騎士たちだけ。


あとはばかばっかで、王の理念を歪めています。


なんでこんな素晴らしい人に共感しないんだろう?ってむずむずしてきます。


 ・・・・なのに、王はなんだかすべてを悟っているようで、
静かなんですね・・・。

俺に任せてくれ!って血気高ぶる軍隊には、 「このままもどってくれ」と静かに説得し、 その直後、騒ぐ馬鹿には「ひくく、ひざまずけ!」 と、一喝。



彼の登場シーンは、芸術的なのです。

オーランド・ブルームのラブシーンとか、葛藤とか、ちいせえ男だな~とw
うすっぺらに見えてくるんですね。


この人のシーンばかり観ていたので、「あ、このシーンではお出かけ用のマスクだ」とか、
下らないところにまで目がいってしまうのですが、衣装が本当に素晴らしいですw



一番心に残るシーンは、やはり最期の時。


末期が近付き、ベットに横たわる王の部屋に妹が入ってくると、王が目を覚まし、

静かに語り始めます。


「夢をみていたんだ。たった16歳で戦争に勝ったあの時のことを・・・」

とかいうんですね。
もうこの時点で、非常に胸に迫ってきます。


すると妹が、
「You were a beautiful boy(うん、本当にきれいな少年だったね。)」と、答え、 しばらくの沈黙し、、
「You've always been beautiful in every way.(どんな意味においても、ずっと美しかった)」 と続けます。


すると、王が言います。

「My beautiful sister... so beautiful...I am sorry if I've caused you any pain.」
(美しい妹よ、私のせいで悲しませたならばほんとうにごめん)


・・・・・・


「Remember me as I was.」 (かつての姿で、私を覚えていてくれ)


これが最後の言葉なわけです。


このマスクは、妹のためでもあるわけです。
そして、国の平和のためでもあるのです。
史実でも、彼は病気になるまで非常に美しく、頭の良い少年であったそうです。


マスクは、彼が支配したエルサレムの象徴。
もう中はぐちゃぐちゃで、崩壊しかけているわけですよ。
彼の力だけで、なんとか表面だけでも、美しくつかの間の平和を保っているわけです。


ということで、彼が守り続けたい平和で美しいエルサレムの象徴だったわけです(たぶんw)


で、このシーンが、本当に希望の光が消えるような、
この人が死んだら、もう駄目だろうな・・・この世界は、という
絶望的でやるせない気持ちにさせられるんですね。



そして、葬儀のシーンです。



私はその感動的な兄妹のシーンで号泣して、頭から離れないセリフを胸に、
かなしい気持ちでいっぱいになっています。


ところが・・・、 なんと、妹が王の遺体にそっと近付き・・・



その仮面を外します。



なんで――――――――――!!!!???


これはやるべきではなかったと思いますね・・・
しかも、そのグロテスクな顔をバッチリ画面いっぱいに写すんですが、
監督は、どういうつもりでこのシーンを加えたんでしょうか?


この妹が本当に無神経なバカ女に見えてきますw


で、もう映画を見るのをやめましたw



日本での公開時、「オーリー大好きキャンペーン」とかやって大々的にこの映画をおしていた日本の配給会社にも通じる無神経さw


『グラディエーター』の監督が間を空けずに制作したこの壮大な映画を、そんなふうに売り出すとは・・・


確かにエルサレムにあまり関心のない日本で、この映画を売るのは難しかったのだとは思うけれど、『グラディエーター』だってヒットしたんだから「オーリー大好きキャンペーン」はないだろうよw



・・・・ってまあこのキャンペーンは別として、早送りして王様のシーンを観るだけでも、 みる価値は十分にあると思います。 っていうか、みんなにみてほしいんです!!!!

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